
先日、楽器の購入を考えていて、あっちこっちの楽器屋さんで楽器を試しているという方が来店されました。
やはり、音や感じが気に入った物でないと買いたくないと、日々試奏を繰り返している方は多いようです。
そこで、楽器の個体差を考えてみます。
以前、僕はFenderのリペアのお仕事をしていたことがあります。
同じ製造時期の全く同じモデルで、カラーも全く同じという様な個体を多いときでは100本近く任されることもありました。
そこで感じたのは、個体差という物の幅の広さです。
確実に個体差は存在しています。
しかし、販売店さんやメーカーさんの広告にはまず書かれていません。
つまり、ある意味隠されてる事実です。
では、なぜ個体差が生まれるのか考えてみます。
まず、多くの楽器の材料が天然素材の木である為に、個体差が生まれるのは避けられません。
生育時の天候、時期、保管状況など様々な物が関係し、木の密度・水分量、木目などなど全てにおいて大小様々な差が出ます。
全く同じ木は2本と存在していないはずです。
同じ名前の木だから同じ音が出るわけではありません。
(ある程度の傾向はあると思いますが、僕はその程度だと思っています。)
つまり、カタログスペックのハカランダ、ホンマホ、ハードロックメイプル、コリーナなどなど、どんな豪華絢爛な材の名前も100%音を保証する物ではないということだと思います。
ですが、カタログ・広告には材が良い、音が良いとしか書かかれていません。怖いですねぇ。
次に、木が加工され楽器の形になり組まれていく間にも個体差が発生していると思います。
機械だけではなく、人間の手による加工が入れば、作業した人の力の入れ具合、癖などにより加工後の仕上がりに違いが現れるでしょう。
ネック周りは、特にそういった作業者の要因による違いがよく見られます。
最後に、出来上がったネック・ボディーにパーツが付けられていきますが、ここでも個体差が生まれます。
電気系のピックアップ・ポット・コンデンサなどのパーツは、テスターを当てて全く同じ値を示す物は少ないと思います。
さらには、密度・重量に個体差のある天然素材のネック・ボディーにパーツを取り付けるので、互いのバランスによりさらに違った個体差を生みます。
もちろん、これだけではないと思います。
考えれば考えただけ個体差の要因は出てくるでしょう。
しかし、このことは公には語られていません。
つまり、シグネイチャーや誰かと同一モデルは、憧れのミュージシャンと同じ音が出るわけではないということですね。
ペダルやアンプも同様に個体差が存在してしまっていると思います。
また、個体差が生むのは音の変化だけではなく、ネックなど各部の不良などに繋がることも多々あるかと思います。
個体差は、楽器選びにおいて辛いところだと思います。
しかし、個体差があるから楽器は唯一無二であり、素晴らしい存在なのだとも思います。
地道に試奏を繰り返すしかないってことですね。
気に入った個体を探すのは大変です。